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「キングダム」最強インフルエンサー!激アツ対談
<第2弾>

森田成一(信役)×小島瑠璃子
アニメ「キングダム」で信を演じる、声優の森田成一と、原作を愛する小島瑠璃子による最強対談! お2人の「キングダム」との出会いや、アニメアフレコ現場でのエピソードなど、ここでしか読むことのできないスペシャルトークをお届け!

『キングダム』との出会いについて

小島:私には弟がいるので元々、少年漫画には触れながら育ってきたんです。…なので、例えば『新宿スワン』とか『土竜の唄』みたいなジャンルの漫画も普通に読みますし、青年漫画に対しての抵抗感とかは全く無いんですよ。

森田:青年漫画だと、女性はとっつき辛く思われる方もいらっしゃるんじゃないですか?

小島:『キングダム』に関しては、もうジャンルがどうとか、そういう問題じゃないですから! 老若男女関係なく楽しめる漫画です。特に、最近の原先生が描かれる絵の「鬼気迫る」感には圧倒されまくりで…。素人目線で生意気言うようですけど、ここにきてまた画力の向上具合がハンパない気がするんですよ! 鎧の描写一つとっても、序盤とはもうまったくクオリティが違っていて! 信の成長とともに、鎧も頼もしくゴツくなっていっている感じがヤバいです!

森田:原先生!べた褒めされてますよ!でも、信がきちんとした鎧を着けだしたのはストーリーがそれなりに進んでからですからね。序盤はずーっと「旅人の服」みたいなので戦ってましたから(笑)。

小島:よく、あの戦場を生き残れましたよね!

森田:最近では飛信隊のみんなも、ちゃんとした鎧で戦場に立てるようになって…。

小島:(目の前に並べられた第3シリーズのアニメ設定画を見ながら)でも、鎧の話をしますと、この媧燐の格好って戦争に行く服装じゃないですよね(笑)。

森田:オシャレ部屋着ですよね(笑)。一番防御しなきゃいけない、お腹が出ちゃってますから。でも、媧燐はやっぱり「こう」じゃないといけないですよ!

小島:森田さんと『キングダム』の出会いは、やっぱりオーディションからなんですか?

森田:作品のことは知ってたんですけど、読んだことは無かったんです。それでオーディションを受ける際に読ませて頂いて「…ヤベ、これすっげェ面白い!」って、一気にハマりました。どうしてもこの作品に参加したいという思いが強くなりましたね。実は最初は政役のオーディションを受けたんですよ。事務所からは、「もしかすると、一緒に信役も受けてもらうかもしれません」というレベルの話でした。いざオーディションが始まって政を演じたんですが、あまり手応えがなくて(笑)。続いて信役のオーディションを受けさせて頂いたら、無事に信役に合格したんです。けっきょく政役は福山潤くんが受かったんですが…福山くんの政の演技を実際に聞いたら「これは、僕じゃ無理だったな」なんて思いましたね(笑)。

小島:信みたいなエネルギーの塊のようなキャラクターに声をのせる作業って「削られ」ませんか?

森田:ものすごく体力も精神力も使いますね。もう8年間、信を演じさせて貰ってますが、とにかく叫びますしね。ただ、僕って喉が異常に丈夫で、声がかれたことないんですよ。他の作品でも『BLEACH』の黒崎一護役や『聖闘士星矢』のペガサス星矢役をやらせて頂いてるんですが、みんな技名を叫ぶキャラなんです。なので、叫ぶ演技は得意なんですよ(笑)。でも、そんな中でも信役が一番叫びますね。

小島:信と他の作品のキャラクターとでは、叫び方に違いはあるんですか?

森田:例えば星矢だと、少しトーンが高めなんですよね。信は地声よりも少し低く、声を潰して喋ってるんです。

小島:より、喉に負担がかかりそうですね。

森田:そうなんですよ。発声する際に、一度自分の喉をギュッと潰してから声を出すんです。その上で叫ぶので、しんどさはありますね。

小島:さらに、信って感情の起伏も激しいですし、内面の熱さも凄いキャラじゃないですか。

森田:戦場で叫ぶのはもちろん、戦い以外でも部隊のみんなに檄を飛ばしたり…。

小島:信は「声」で人を惹きつけないといけないですもんね。

森田:場面場面で色んな「叫び」があって…。『キングダム』はそこが難しい作品ですね。

小島:感情ののせ方って「テクニック」なんですか? それとも「気持ち」なんですか?

森田:僕個人としては「気持ち」だと思います。ただ、難しいのは、その気持を台詞のどの文言にのせていくか…。

小島:感情を一番強くのせて表現するのは、台詞の中のどの単語なのかと考えながら…?

森田:例えば、信の台詞に「馬陽」という言葉が出てきたとして、信にとっては「馬陽=王騎」だったりするんですよ。その想いを込めながら「馬陽」という言葉を喋らないと、台詞が宙に浮いてしまうんです。重要な単語があると、気をつけながら演じますね。

小島:ひとつひとつの台詞を読み解きながら演じられてるんですね。

森田:それがまた、普通のシーンならいいんですけど、叫びながら盛り込んでいかなきゃいけなかったり…。

小島:馬に乗った状態の信を演じられることもありますもんね。

森田:その場合は、馬の蹄のSE(※サウンドエフェクトの略、効果音のこと)とかも入るわけですからね。それに負けない声を出さないといけない。たまにね、もうちょっとだけSEの方を落としてもらえないかな…なんて思ったりもしますけど、作品に迫力を出すためには妥協できませんからね(笑)。

それぞれの目から見た『キングダム』の魅力とは?

森田:原作漫画を最初は5巻くらいまで一気に読ませて頂いたんですが、もう1話での漂の死を見た時に、いきなり予想を裏切られて愕然としたのを覚えてますね。

小島:その反応は、私もまったく同じです…。本当に愕然としました。てっきり、王宮で働くことになった漂と、下僕から立身出世を目指す信という「W主人公」で物語が進んでいくんだろうなと思ってましたから。

森田:そうそう。読みながら「あれ? 伏線が無くなっちゃったぞ」って。

小島:改めて思いますけど、漂の死を見て私達読者が「悲しい」と思えるのって、凄いと思うんですよ。あの短い描写しか無い中で、惜しまれるキャラクターにちゃんとなっていますから。

森田:漂から「託したぞ」と言われたときには、グッときましたからね。アニメであのシーンを収録するときも、もう大泣きしながら録ってましたよ。

小島:その後、間髪入れずに同じ顔の政が登場して…本当によく出来た導入ですよね。

森田:男性目線で見ると、やっぱり物語の「熱さ」であったり、信というキャラクターが荒くれ者から登り詰めていく過程が魅力だったりすると思うんですが、この作品の最大の魅力って「人」を描いているところだと感じるんです。信が剣ひとつで成り上がっていく姿というのは、やっぱり男にとっては理想像のひとつです。そして、信というスーパーヒーローだけではなく、別の側面から体制を改革していく政というキャラクターの存在。現代社会の会社組織なんかにも通じる事ですが、組織を取りまとめるリーダーと、現場の最前線で戦っているリーダーを同時に描かれているのが『キングダム』がヒットした要因のひとつなんじゃないかと個人的には思いますね。…ちなみに、女性目線ではどうなんですか?

小島:そうですね…私の周りには男勝りに強い女性が多いので、一般的な感覚からは少しズレてるかもしれません(笑)。友人達はみんな、男性に混じってバリバリに働いているんですけど、そういう子達はみんな好きでハマってますね。そう考えると「働く人」に響くものがある作品なんじゃないかと。毎日「戦ってる」人達の共感を呼ぶんだと思います。

森田:女性の目には、河了貂や羌瘣のような『キングダム』に登場する女性キャラクターはどう映るんですか?

小島:『キングダム』の1巻から最新刊までについて思いを巡らせてみると、女性キャラクターの印象って強く残ってるんですよね…。紫夏や瑠衣…それに媧燐。

森田:僕は楊端和が大好きですね。

小島:楊端和は私ももちろん大好きです! 女性キャラクターには、やっぱり思い入れを持って読んでしまいますね。

森田:女性から見てもカッコいいと?

小島:そうですね、カッコいいです。男女平等になりつつあるけど、まだ問題は山積みになっている現代社会を、私はいま生きていると感じているんですが、彼女たちの活躍は、そんな現代社会で戦っている女性達の姿を代弁してくれているようなイメージを受けますね。

森田:あ―…なるほど!

小島:あと、私が『キングダム』を魅力的だなと思う要素としては、視点が敵側にもあるということですね。敵側のキャラクターの心情にも寄り添って描いてくれるんですよ。趙や楚は読者からすると敵なんですが、彼らにもきちんと戦う意味や掲げている正義があるじゃないですか。私達の日常生活にも同じことが言えるんですけど、物事を一方から見ただけではダメだと。相手側の状況や境遇を慮ることが、人として生きていく中で大事なことだと思うんですね。それを、原先生は『キングダム』という作品でずーっと描かれていて。原先生の「優しさ」みたいなものも作品に滲み出ているのかなと。

森田:その話を聞いて思い浮かぶのは、信と万極の戦いですよね。僕もちょうど、ついこの間、合従軍での万極との戦いのシーンを収録したところなんですよ。

小島:とにかく辛いエピソードで。万極の行い自体は決して許されるものではないんですけど、この憎しみの連鎖が戦争というものなんだなと。万極がそうなってしまった理由も、丁寧に優しく描かれていて。そういうところがたまらないんですよね。

森田:信の考え方も、はっきりと描かれますしね。僕の中で強く印象に残ってる大好きなシーンがあるんですが、信達が魏の高狼城を攻めた時に、現場での略奪行為を許さないじゃないですか。あの時の信の台詞って、それ以降もずっと彼の根っこにあるんですよ。そこから「合従軍編」での万極との戦いまで繋がっていっているイメージがあります。国そのものを変えなくちゃいけないと信が肌で感じ、そのためには政の剣となって戦うことが必要だと。単なる歴史もの、春秋戦国時代をただ描いたクロニクルではないんですよね。

小島:そうですね、カッコいいです。男女平等になりつつあるけど、まだ問題は山積みになっている現代社会を、私はいま生きていると感じているんですが、彼女たちの活躍は、そんな現代社会で戦っている女性達の姿を代弁してくれているようなイメージを受けますね。

森田:あ―…なるほど!

小島:原先生って、例えるなら凄い人数の「子育て」をされているようなものだと思うんですよ。『キングダム』に登場する数多くのキャラクター達はもちろん原先生の子供みたいなものですし、そのキャラクター達を通して私達に訴えかけることで、読者側も「育て」られてるんじゃないかと…。

森田:なんとなく、わかります! じゃあ仮に、我々が原先生に育てられてるとして、小島さんはキャラクターでいえばどのタイプなんですか? 僕は間違いなく「信」ですけど。

小島:よく考えるんですけど……しいてあげるなら「政」だと思います。物事をロジカルに考えると言うか…何か世の中を変えようと思ったら、構造改革から手を付けていくタイプ。

森田:まずはシステムから変えていくと。

小島:私は、そういう方法を目指すタイプだと思います。…でも、政だけじゃないんですよね、色々なキャラクターの要素が複合的に含まれてるんですよ! この場面では渕さんから教わった、政にはこの場面から教えてもらった、楊端和には…バジオウには…みたいな(笑)。『キングダム』で描かれている色んなキャラクターのバックボーン…それらのピースを繋ぎ合わせると、原先生が思い描く、人が生きていくひとつの「道」を指し示してくれているような気がします。伝える方法が、たまたま漫画であっただけだと。そんな原先生の「思い」を素直に受け止めていられる自分のままで生きていきたいと常日頃から思っています。『キングダム』を心から楽しめなくなってしまったら、今の仕事から身を引いたほうがいいのかななんて…。

森田:なんだか仕事に疲れているみたいな…(笑)。

小島:さすがに語弊がありますかね(笑)。ただ、疲れた時には心にもきちんとお水をあげないといけないじゃないですか。それが私にとっては『キングダム』なんですよ。もし私が道からそれそうになっていたとしたら、『キングダム』が「おい、思い出せよ!」と軌道修正してくれるみたいな(笑)。

森田:確かに『キングダム』からパワーを受け取れるというのはわかります。自分自身が挫けそうなときでも、信念を貫き通す登場人物達の生き様をみると勇気づけられます。どのキャラクターに共感するかは人それぞれだと思いますが、色んな人の多種多様な感性を全て受け止められるくらい、数多くの魅力的なキャラクターが登場しますからね。

小島:サラリーマンの読者の方なんかも、上司に邪魔されたり、なかなか会社で自分の思うように仕事を進められないなんて境遇に陥ったとき、信や政からヒントや勇気をもらえたりするんじゃないかなと。

森田:ただ、信みたいなキャラクターって、本人がよっぽど強くない限り、いまの世の中だと社会からはねのけられたりしちゃうと思うんですよ。理想的な姿過ぎて、社会からはみ出しちゃう可能性がある。本当はみんな、こういう生き方が出来ればいい…こうなりたいとどこかで思ってるはずなんですけどね。まぁ、世の中が信だらけになってしまったら、それはそれで圧が強すぎるとは思いますけど(笑)。

小島:でも、やっぱりひとりくらい、そういう人が立ち続けているってことが大切ですよね。

森田:現場のリーダーにはなってほしいと思うけど、その上に、彼を御する「会長」みたいなポジションの人がいたほうがいいと思います(笑)。

小島:…会社組織で言うと、(桓騎を指しながら)こういう人材ってどうですか?

森田:重役クラスには、ひとり必要なポジションだと思います。事務所の社長とかになっても、そうとうなやり手になると思いますよ。

小島:完全に同意です!

森田:王翦なんかもね。

小島:私、実は王翦がちょっと怖いんですよ(笑)。なんなら、敵の将軍なんかよりも不気味で…(笑)。

森田:確かに、考えが読めませんからね。王賁も将来、あんな感じになっちゃうんだろうかと…(笑)。仮面キャラってそういうところありますからね。仮面キャラの素顔って気になります?

小島:バジオウの素顔は、超イケメンだと思います!

森田:それは僕も思う!

小島:タジフは…なんかもうケンコバさんの顔で思い浮かんじゃいます(笑)。

森田:(大笑)。

小島:作中で素顔が描かれないまま、『アメトーーク!』でケンコバさんがコスプレしちゃったじゃないですか。だからもう、完全にタジフとケンコバさんのイメージが一体化しちゃって(笑)。

TVアニメが6年ぶりに再開!

森田:最初にアニメが始まったのは、もう8年も前(※2012年6月)のことなんですが、その間も他の現場で『キングダム』のキャストさんにお会いすると「『キングダム』って、続編まだなのかな?」という話に自然になるくらい、役者陣はみんな大好きな作品なんです。なので正式に第3シーズンの制作が決定した時は、先輩の役者さん達からも「おう森田、始まるな!『キングダム』」なんて声をかけられたくらいで、僕らもみんな待ってたんです。なので現場の熱量は第1、2シリーズよりもはるかに高くなってると肌で感じますね。

小島:久しぶりに信を演じられていかがでした? 1話から演じてこられた中で、何か心境の変化とかありますか?

森田:血は繋がっていないとはいえ、唯一の肉親のような存在である漂が死んで、悲しみと憎しみから始まった信の物語が、第2シリーズの最後には輪虎と壮大な一騎打ちを演じるまでになるじゃないですか。その道程には、さっき少し話に出ましたが高狼城での略奪行為を働いた同じ秦軍の将校を斬るエピソードであったり、色んな出来事があって、信という人物像が僕の中でも大きく変わっていきました。信も戦災孤児ですから、戦争の犠牲者です。辛酸を嘗めて生きてきた彼が自らの境遇を変えようと剣を手にして立ち上がった。それがやがて、自分の剣の届く範囲だけではなく、より大きなものを守るために戦うようになっていく。王騎の矛を受け継ぐような人物になっていく片鱗を見せてくれる。山陽の戦いでは一気に信の成長が感じられて、それと共に僕も信役として、自然に成長していけたと思っています。

小島:「成長型」の主人公って、やっぱり演じていて面白いですか?

森田:そうですね、とても面白いし、やりがいがあります。僕は成長型の主人公を演じさせてもらう機会が多いんですけど、数年ぶりに『キングダム』の現場に戻ってきた時に、スタッフさんから「森田くんの信、なんだか丁度いいくらいの成熟具合をしてるね」なんて言われたんですよ(笑)。僕自身は第2シリーズからの延長線上にある信を、そのまま演じたつもりだったんですけど(笑)。

小島:気づかないうちにレベルアップされてたと…?

森田:レベルアップというか、僕も6歳、歳をとってるわけですしね。その6年間で、自分の中にある信のキャラクター像が熟成されていったというのもあるんだと思います。でも、第3シリーズで合従軍の戦いに挑む信としては、それくらいで丁度よかったみたいです。第2シリーズまでのままでは、少しまだガキっぽさが残っちゃってますからね。

小島:確かに…「合従軍編」では成長した信じゃなきゃ駄目なシーンがいくつも出てきますもんね。

森田:万極に対して、「お前の全てを背負っていってやる」と言い切れたところなんて、如実に彼の成長が現れてますからね。いままでなら、ただ敵を倒すことだけが重要でしたから。さっき小島さんもおっしゃってましたけど、倒す相手の気持ちにまで思いを馳せられるようになっている。

小島:相手を思いやるからこそ、他国を滅ぼして悲劇を終わらせるんだと。もう、戦場で政の思想を体現しているような存在になってますよね。

森田:まさに、王の剣ですよ!

アニメで描かれる「合従軍編」の魅力とは!?

森田:第2シリーズまでは、あくまで物語の主役は信で、彼があらゆる場面で大暴れして引っ掻き回すといったイメージだったんです。でも「合従軍編」は各国、各人の思惑が常に裏側にある物語ですから、勢いというよりも、序盤は静かに蠢いているような印象ですね。そういった、これまでのシリーズとは異なった緊迫感が面白いです。

小島:秦国としては、奇襲を受けて崩れかけたような形になるんですが、そのひとつひとつの局面に対して打開策を打ち出して反撃していく。戦術面的な面白さも「合従軍編」ならではですよね。アニメでもとても楽しみにしています。

森田:第3シリーズは、原作に忠実に丁寧に描かれていくそうなんで、原作ファンも納得できる「合従軍編」のアニメ化になると思いますよ!

小島:でも、過去最大級の合戦ですから、軍勢の動きにしてもアニメにするのは物凄く大変ですよね。もし私がアニメーションの作り手側の立場だったらと思うとゾッとします…(笑)。

森田:「斜陣」とか、映像で見ると凄そうですよね!

小島:回転系の陣もヤバそうです!

森田:でも、ちゃんとアニメーターの皆さんが動かすんですよ。漫画では描かれていない繋ぎの動きなんかも全部計算して。

小島::「合従軍編」は、この作品においてのターニングポイントではあるんですけど、逆にここから見始めても全然問題ないとも思うんですよ。原作漫画を読んだことがない人がいきなり「合従軍編」のアニメを見ても、きちんと物語に入っていけると思います。

森田:『キングダム』未体験の人に、どんどん入ってきて欲しいですよね。物語の主要人物の魅力も、「合従軍編」から見始めても十分に伝わると思いますし。例えば、人気キャラのひとりである桓騎にしても、彼がどういった人物なのかきちんと描かれていくのは「合従軍編」からだといってもいいくらいですしね。

小島:は~…、もう桓騎と聞いただけで、背を向けて弓を構えて立っている原作の見開きシーンが目に思い浮かびます(笑)。

森田:「はしゃぎすぎなんだよ」ってね(笑)。

小島:もう、言動の全てがイケメンすぎてて! あのシーンは、原先生の描かれた構図がヤバいんですよ(笑)。

森田:アングル、ヤバいですよね(笑)。

小島:もう、映画監督ですよ!「ここからこの角度でカメラを回すんだ!」みたいな!

森田:この間、原先生とお話させていただいた時に、「決めカットの構図って、いったいどうやって考えられてるんですか?」って聞いたんですよ。僕もカメラが趣味なので、画作りの構図には興味があって。先生の頭の中では、一連の動きを考えられてその中から抜き出しているのか、それとも最初から一枚の止め絵として情景が浮かんでいるのか。そうしたら、基本的には「両方」なんだそうです。ただ、一番重要視されてるのはその時々の「勢い」だと。流れを止めずに戦場を描いていくので、カメラを俯瞰にして戦場全体を見渡すような構図も、先生の頭の中には常にあるんですよ。

小島:一般兵の動きひとりひとりにも気を配って描かれてるんでしょうね。

森田:兵士といえば、『キングダム』のアフレコでは「ガヤ」の収録も大変なんですよ(笑)。

小島:歓声なんかは、一度録ったものを使い回すんじゃダメなんですか?

森田:ダメなんです。毎回、きちんと録り直してます。ガヤは『キングダム』名物のようなもので、僕を含めメインキャストみんな参加してます。第3シリーズが始まる前、新キャラのキャスティングについて役者陣の希望を聞かれたことがあるんですけど、みんな揃って「喉が丈夫で潰れにくい人をお願いします」って答えてました(笑)。

小島:なんだか凄い現場ですね…ちょっと昭和のブラック企業っぽいかも(笑)。「激務でも潰れない新人を入れましょう!」みたいな(笑)。

森田:『キングダム』に参加できる役者の第一条件が「喉が潰れないこと」なんです(笑)。実際の収録中でも、他の役者さんの声がイマイチ出てないなと思ったら、後ろからそーっと寄っていって大声を出して鼓舞しあったりしてます(笑)。ガヤの収録では、率先してみんな前に出ようとしますよ(笑)。第1シリーズから続く伝統です。


『キングダム』史上、最多の収録人数を記録!!

森田:「合従軍編」に入ってからは、スタジオに入る役者の数がこれまでに比べて圧倒的に増えてるんです。この間、新記録を作りましたよ。40人以上が参加して、もう座る場所も無くて(笑)。ありえない状況です。普通のアニメの現場なら、役者が十数人集まるだけでもかなり多い方ですから。さすがにその時は、二組に別れて収録しましたけどね。でも、平均すると30人以上は常に参加してます。20人くらいしか参加しない収録では、「あれ? 今日は人数少ないね」みたいな感覚に(笑)。

小島:楽しそうな現場ですね(笑)。

森田:ただ、男ばっかりでね…(笑)。「合従軍編」では羌瘣の出番も少ないですし、唯一、河了貂役の釘宮理恵さんが孤軍奮闘されている感じです。あ…でもようやっと! ひとり女性が増えましたね! 媧燐が…(笑)。

小島:媧燐は個人的にも大注目です! 彼女は史実の登場人物ではなく、原先生がオリジナルで考え出されたキャラクターだそうなんですが、だからこそ、特別な意味が込められているキャラなんだと思うんですよね。「合従軍編」の大きなテーマの一つに「世代交代」というものがあると思っていて、新世代の台頭、躍進が描かれていくんです。媧燐もそうですけど、各国のこれからを担うキャラクターが一気に登場してきて、それが秦国の次世代を担う信達と出会う。彼らとの間に、今後どんなドラマが生まれていくのか、とても楽しみなんです。

森田:ものすごい数のキャラクターが集うエピソードなので、信が登場しない回とかも出てきちゃうくらいで…。それではいかんと、何か兼役でも貰えないかと画策中です(笑)。実は第1シリーズでは信の未登場話で兼役(※田慈)をやってるんですよ。なのでまた、密かに狙ってるんです。キャスティング担当の方からは「大人げない」って苦言を呈されたりしてますけどね(笑)。他の役者さんはけっこう兼役をやられたりしてるんですが、流石に主役をやって兼役までもらおうとするのは図々しいと(笑)。でも、諦めてません!

小島:どのあたりを狙ってますか?

森田:ぶっちゃけると、バミュウを狙ってたんですよ。でも、バミュウを完璧に演じられる役者さんに決まってしまったので(笑)。

小島:でも、あまりメイン級のキャラクターだと、下手したら信と戦ったりすることになってマズくないですか?

森田:自分の演じるキャラ同士が戦うというシチュエーションって、アニメの世界では時々ありますけどね。だから『キングダム』でも大丈夫です!

小島:どうしてそんなに兼役をやりたがってるんですか? ギャラが2倍になるとか(笑)。

森田:単純に、現場を1話たりとも休みたくないんですよ。

小島:ええ!? どういうことですか? お休み、欲しくないんですか!?

森田:欲しくないですね。特に『キングダム』の現場は外れたくないんです。この作品には、本当に個性的で、一癖も二癖もある役者さんが揃ってます。第3シリーズになって、また新たな役者さんが参加されましたが、みんなすぐに現場の雰囲気になじまれてますね。春申君役の内田夕夜さんなんて、出足りないのか入ってきて早々に「兼役をください」って仰ってました。兼役争奪戦は、まだまだ白熱中です。

「合従軍編」のおすすめキャラ&シーンは!?

森田:斎藤志郎さんの演じられる麃公は、信とのドラマもあって、お気に入りのキャラクターです。王騎がいなくなって、信にとっては次の師匠のようなポジションですしね。戦場での「火の起こしどころ」について学ぶという、作中で麃公の本能型の考え方に唯一気がつくのが信という関係性は面白いです。敵陣営だと、意外とオルドがお気に入りです。ちょっとお調子者感があるというか。ピリッと張り詰めた空気を和ませてくれる感じが。

小島:北の方の出身だということもあって、雰囲気が他の武将とも違ってますよね。

森田:顔立ちや雰囲気は、騰なんかと少し似てるかも。

小島:こういうテーマのとき、いつも迷っちゃってダメなんですよ。うーん……実は私、成恢との戦いが意外と思い出深いというか、好きなシーンが多いんですよね。成恢と張唐の対峙は、長く戦場に身を置いてきた武人の誇りや魂の真っ直ぐさが感じられる、いいエピソードだと思います! その背景にある張唐と桓騎もいいんですよね。実力のある若手をなかなか認められない大ベテラン…みたいな。

森田:なんだか小島さんの話を聞いてると、ご自身の実生活に『キングダム』を重ねて見てるフシがあるような…(笑)。

小島:そうかもしれないです(笑)。漫画の世界だけに留めておくにはもったいなくて。

森田:僕も、張唐のシーンは大好きですね。張唐の「何をさらしてくれとんじゃ」という物凄い怒号はぜひ楽しみにして欲しいです。「大将が背を向けて逃げるな!」という台詞も、とにかくカッコいい!

小島:張唐と蒙驁は、大ベテランとしての存在感があるんですよね。

森田:函谷関の上に蒙驁が立って「重みじゃよ」とね。

小島:新世代のキャラクター達のイケイケ感とは違う重厚感。「負けない」という積み重ねられた歴史を感じますよね。後ろに彼らが控えている事の頼もしさ!

森田:またその、古参中の古参である張唐がね、勝つためには桓騎の策にも乗るというのもね…たまらないものがあるんですよ。

小島:また桓騎の話になっちゃいますけど、その策での桓騎の余裕っぷりもカッコよすぎて…とにかく痺れますよね。「ハハハ、射て射て」って(笑)。

森田:元野盗ゆえの、型に縛られない発想の作戦!

小島:桓騎軍の兵士達も、まったくお頭の作戦を疑うことなく付き従うんですよね。

森田:もう少ししたらアフレコもそのシーンを録るんですけど、僕もガヤで参加して頑張ります(笑)。漫画を見ても、物凄い吹き出しの数ですからね…どういう収録になるか、ちょっと恐ろしいです。そういえば、前シリーズでは(絵コンテで)100カット以上ある一連のシーンを、5回繰り返して録ったことあるんですよ。

小島:ええ!? どういうことですか!?

森田:まず最初に味方陣営の声で2回、敵側で1回、山の民で1回、最後に「やられ声」などのその他の声を入れて、100×5の地獄の500カット回し。

小島:ちょっと、壮絶すぎて若干ひいてます(笑)。でも、そんな過酷な現場にも関わらず、兼役を求めてまで参加されたいんですよね。

森田:一度、アフレコ現場を見学してほしいです。現場を見てもらえれば、参加したいと思う役者陣の気持ちもわかると思います。TV放送じゃなくて、「生」の役者の叫びを聞いて欲しいですね。もう、すさまじいボリュームですから(笑)。

小島:お邪魔しちゃっても…いいんですかね?

森田:もちろん、ぜひ!

小島:差し入れ持って伺います!

森田:みんなも喜ぶと思いますよ。張り切りすぎて、なんだか声が上ずって高くなっちゃったりしてね(笑)。

小島:差し入れといえば、喉を守るために口にしない食べ物とか飲み物とかあるんですか?

森田:僕は特に無いです。

小島:牛乳とか、乳製品はダメだなんて聞きますけど…。

森田:確かに喉に膜が張っちゃったりするんで、収録中は避けますね。あとは、メロンを食べちゃダメだとか言われてます。メロンの甘さって、喉を攻撃しちゃうらしいんですよ。でもまぁ、皆さんそれほど気にせず、自由に飲み食いしてますよ。食べすぎはよくないですけど。

小島:じゃあ、軽くつまめる美味しいものがいいんですね…わかりました! ひとつオススメの差し入れがあるんですよ! 東銀座にある「白金や(ぷらちなや)」さんの「いなり寿司」が凄く美味しいんです!

森田:最高ですね! みんないつも収録ではお腹をすかせてるので、ぜひお待ちしています! キャスト・スタッフ一同が小島さんに「大王様!」ってひざまずきますから(笑)。…あ、ただし僕がいない時に来るのは勘弁してくださいね!

最後に、ファンに向けてのメッセージを!

森田:今回の対談を読んで頂いて、『キングダム』に対する我々の「熱」は伝わったんじゃないかと思います。TVアニメ第3シリーズは、今まさに鋭意制作中です。前シリーズ以上に力を入れて制作しておりますので、ぜひ放送を楽しみにしていただければと思います! そして、アニメはこれで終わりじゃなく、第4、第5シリーズと続いていってほしいし、これからもずっと信を演じ続けていきたいです。そして、いつかまた兼役をね(笑)。原先生に、新キャラクターを作って貰えないだろうかと密かに考えてるんですよ。森田成一から取って「田成(でんせい)」とか、どうでしょうか? 「田」性、意外と多いですからね!

小島:こうして森田さんのお話を伺っているだけでも過酷な現場だということが伝わってきます。熱く、真っ直ぐな想いで制作されているということが、部外者の私にもひしひしと感じられるくらいですから、きっとTVアニメはものすごい作品になっていると思います。私は初めて漫画で「合従軍編」に触れた時、本当に心から感動しました。後々にまで影響を与える重要なエピソードです。それを今回、もう一度アニメという新しい媒体で楽しませてもらえることはとても嬉しいことです。

森田:小島さんにも、いちファンとして、ぜひアニメを楽しんで頂けたら幸いです。

小島:はい! 本日はどうもありがとうございました!



森田成一【Profile】

青二プロダクション所属。『FINAL FANTASY X』ティーダ役、『キングダム』信役、『BLEACH』黒崎一護役、『MAJORシリーズ』佐藤寿也役、『TIGER & BUNNY』バーナビー・ブルックスJr.役、『聖闘士星矢 冥王ハーデス編』ペガサス星矢役など、多数の主役・メイン級のキャラクターを担当する。

小島瑠璃子【Profile】

ホリプロ所属。第34回ホリプロスカウトキャラバンでグランプリを受賞。バラエティタレントとしてだけでなく、司会者、グラビアモデル、スポーツキャスターなど、幅広い分野で活躍中。2015年放送の『アメトーーク!』「キングダム芸人」では羌瘣のコスプレ姿を披露し、完成度の高さが話題となった。

Photo:上山陽介

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『キングダム』原作者 原泰久

アニメ『キングダム』第3シリーズの放送が決定しました!
実に5年半ぶりとなる今回の新シリーズでは、
制作陣のスタッフィングから僕も携わらせてもらい、
まったく新しいチームでの始動となりました!!
現在、絶賛制作進行中ですが、脚本、作画、音楽、どれを取って
も皆さんの期待に応えられるアニメーションになると思います。
描かれる物語は、ついに合従軍編!
人気キャラクターが勢ぞろいするこの長編シリーズが
どんな迫力の映像に仕上がるのか、
僕自身、放送開始が楽しみです!

キングダム KINGDOM

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